初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

 チリリーン――……

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 ――今日は、何度期待をもって入口のベルに反応したのかな?

「こんにちは、さくらちゃん。自分、また今日も来ました」

 期待を持って見るそこには、あたしの望む姿はなくて。

「連日のご帰宅ありがとうございます、ご主人様」

 今度こそ――と思って振り向いた今回も、別の常連の大山さんだった。

「今日はなんだか元気がないみたいですけど」

 席に着くなり、あたしのほうをちらりと見てそう言う大山さん。

 毎回、なんとなくあたしに対する観察案は鋭い。

「そんなことないですよ。ご主人様がご帰宅下さって嬉しいんですから」

 にっこりといつもの体裁を繕い、あたしは何事もなかったかのようにお冷とおしぼりを差し出し、注文を聞く。

「ふぅん、まぁいいですけど」

 あたしがそう答えると、大山さんは少し不満そうな表情をしながらもいつものメニューを注文。

 そんな大山さんを気にすることもなく、いつものようにオーダーを受ける。

 ……シンさん以外の人だったら、こうしてちゃんと仕事が出来るのに。

 どうして、あたしはシンさんだといつも通りにできないんだろう。