「あっ、ごめんだけど…ちょっと隣の空き教室に来てくれないかな…? ホント、ごめんね?」



 私はそう言うと電話を切った。



「蓮君が来るのね♪」


 夏川さんはブレザーのポケットからグロスをだしてたっぷりグロスがぬってある唇の上にさらにグロスを塗った。




「夕菜ちゃん、気にしないでいいよ? 夕菜ちゃんはデブじゃないからね?」

「…ズッ…ぅ…う…ん…」




 鼻をすすりながら答える夕菜ちゃんはメイクも濃くないから目は少し赤いけどいつもの顔。




「どーしたの?」



 ガラッとドアを開けて顔をのぞかせたのは……歩夢君。




 私がさっき呼び出したのは歩夢君。





 今は私なんかより夕菜ちゃんのほうが傷ついてるから…歩夢君のほうがいいと思って…。




「…なんか…修羅場?」


 にこっと笑って入ってきた歩夢君は一気に真剣な顔つきになった。



 そして夕菜ちゃんの顔を見るなり……



「…夕菜に何したの」



 ギロっと見たことない歩夢君の睨む顔が夏川さんに向かった。