― ― ― ― ― ― ― 


目の前で物凄い運動神経を見せつけられた私は、その後、野田っちが来てお説教タイムが始まってもぼけーっとしていた。


先程の男子生徒の綺麗に整った顔が頭の中を占領する…。


印象的な切れ長の黒い瞳が頭を痺れさせる。


何か…私、変……かも。


頭が正常に働かない…。


帰り道、これまたぼけーっとしていて危うくもう少しで電柱に激突するとこだった。


「ただいまぁ〜」


「あ。お帰り〜♪今日は遅かったのねぇ〜」


玄関で靴を脱ぎ、ダイニングへと向かう。


お母さんと少し話しながら、キッチンまで行って冷蔵庫の前に立つ。


「陽菜〜」


「何〜?」


「ちょおっとコッチにいらっしゃい?」


「は…はひ…?」


冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、コップに注いでいた私に呼び掛ける2階のお母さんの元へ駆け寄ると……。


「こ・れ・は……?」


お母さんは私の部屋の扉を開けて指差して言った。


「……てへっ☆」


「『てへっ☆』じゃないの〜! 今すぐ片付けなさい!」


「はぁーい……」


私は言われて仕方なく散らかった部屋を片付ける事にした。


私のお母さんはとっても綺麗好きで片付け上手。


一方の私は綺麗に片付いてるのは好きだけど片付け下手。


だからお母さんに片付けろと言われるのはいつもの事。


……でも今日はなかなか片付けれなかった。


あの男子生徒の事で頭がいっぱいで……。


別にその子のせいにする訳じゃないけど。