「桜木。おい、桜木?」 隣の席の篠原の声。私を呼んでいる。 ぼーっとしていたのか、声に気づくのが遅かったらしい。 篠原は少し不機嫌そうだった。 「ノート貸して。要点見ときたい」 ノートを貸すことは少なくない。 でも私はいつも思う。 なんで学年トップの多岐さんにノートを借りないのだろう。