景くんは、一瞬強く震える。
「だから…。これは戒めなんです。私は、あの方と共に生きることを、望まれていないんです。だけど……」
ぽたり、ぽたりと、水滴が床に落ちる。
「…せめて、見ていたいんです。あの方の幸せを…。私は…」
景くんの両手は、自らを強く抱きしめた。
倒れてしまいそうな自分を支えるみたいに。
そして、絞り出すような声で叫んだ。
「あの方と…弓鶴様と、関係を絶つなんて…できないんです…!」
「まだ、あの人を……」
「好きだからっ…」
その悲痛な思いは、
あたしなんかじゃ、想像できなくて。
床に崩れる景くんを、
見てることしかできなかった。
――あたし達三人は廊下にいた。
『…貴様らが居ると景は無意識に感情を抑える。しばしの間、外に出ていろ』
そう、田沢に言われてしまった。
悔しいけど、今のあたし達よりも田沢の方が事の次第をよくわかってる。
だからあたし達は、景くんを田沢に任せて、落ち着くまで廊下で待つことにした。
