「…そ、っか…」
…良かった…
良太とあたしはホッと安堵した。
だけど……。
何故か拓真だけが眉を寄せて景くんを見ている。
「……あんたはそれでいいのか?景」
…何を言ってるの?
景くんも怪訝そうな顔をした。
拓真が続ける。
「…確かに、俺達はお前にいてほしいと思ってる。だけど、その選択は、斎藤弓鶴と全く関係ない立場には逃げられない」
拓真の冷静な眼差しが景くんに向けられた。
「あの様子じゃ、斎藤先輩は確実に演劇部員になる。容姿端麗で記憶がないとはいえ本人役を演じるんだ。彼ほどうってつけの役者はいない」
景くんは何も言わずに拓真を見つめる。
「演技とはいえ、景姫役のマナ先輩と恋人役になるわけだ。それもかなりキツイと思うが、それ以上に……裏方っていうのは、役者同士のように作った仕草ではなく、生きていて自然と身についた動作で役者に接する。稽古中のアシスタントもするし、あんたの場合衣装合わせも小道具の使い方の指導もしてもらわなきゃならないんだ」
景くんの顔が僅かに歪んだ。
「つまり、景が斎藤先輩と無関係でいるっていうのは無理。…好きな人に触れられる所にいるのに、それを必死で耐えて、おそらく群がってくるであろう女子達と接して、いつか景じゃない人の物になるのを黙って見てるのは、つらすぎない?」
