良太……。
「…あたしも、だよ。こういう髪型は、あたし達じゃできない。それに…」
あたしはそっと簪に触れる。
「こんな綺麗な簪、あたし達じゃ手に入らない」
だから……。
あたしには、あたし達には、景くんが必要だから。
「……どこにも、行かないで」
景くんは、しばらく驚きに満ちた表情であたし達を見ていたけど、唐突にクスッと笑った。
「…え、景くん?」
……自分が言ったことが今更恥ずかしくなってくる。
「ゴ、ゴメン!なんかあたし、変なこと言っちゃって……」
あわあわしながら言うと、景くんは小さい向日葵みたいな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます。……でも、私は元々演劇部を辞めるつもりなんてありませんよ?」
……
…………
…………………え?
えーと、
「なんで!?」
今度はあたしが驚く番だった。
景くんはさっきとはうってかわった朗らかな声で答えてくれる。
「無理を言ってやらせていただいてる仕事を、途中で放り出したりしません。あくまでも可能な限り斎藤先輩には関わらないだけです」
