景くんの唇が動く。
「…私が信じなければ、そこで終わってしまいます」
良太から離れ、田沢を見つめる瞳は、とても真っ直ぐだった。
「人が愚かだというならば、私もまた愚かです。もしもあの時、私が人々の前に身を投げ出していれば、あの方は………弓鶴様は助かったでしょう」
……やっぱり、斎藤弓鶴という人が『青年』なんだ。
「だけど私はそうしなかった。弓鶴様と共に逃げる道を選びました。その結果、弓鶴様を死なせてしまった……」
だけど、と呟く声はかすれていた。
「私は後悔していません。だってもし後悔してしまったら、弓鶴様が失った命を無下にすることになります」
言いながら微笑む景くんは、とても哀しそうで。
なんでそんなに人を愛せるんだろう。
田沢が、少し怒ったような顔をした。
「…ならば斎藤も愚か者だ。貴様など捨て、あのお勢とかいう女と一緒になれば良かったものを」
その冷酷非道とも言える言葉に、景くんは苦笑した。
「…私もそう言ったんですけど。そしたら、『お前以外の女なんざ選ぶ余地もねぇ。そんなこと二度と言うな』って、怒られちゃいました」
