「貴方ですか!?あの方をこの学校に誘い入れたのは!?」
「何故そうなる。俺なら学校に入れることはおろか、この町に近寄らせん。今回のことは全くの偶然だ」
田沢の大きなため息が教室内に響く。
「しかし、俺でもなければ貴様でもない。斎藤は記憶を持ってはいないようだしな」
記憶がない、って…
「ね、ねえ。景くん達は、一体何の話をしてるの?」
あたしは景くんに聞いた。
景くんはしばらく俯いていたけど、やがて顔を上げて立ち上がる。
「…私の名前は、景。そして田沢泰明の本当の名は――」
次の瞬間、景くんの口から出た言葉に、あたしの思考回路は停止した。
「……君仁」
「…え…それって」
「貴様ら演劇部の題材『水鏡に映る花』に出てくる大妖怪の息子の名だ」
なによ、それ…。
「からかってんのか!?」
良太も驚愕に目を見開き、ひっくり返った声で呆然と聞く。
田沢はあまり変わらない調子で返す。
「俺が貴様らをからかったところでなんの益がある。仮に俺が余興で貴様らをからかったとして、景が便乗するわけなかろう」
