「俺なわけなかろう。第一、恋愛小説など読んでて吐き気がしたわ」
……っていうか、なんかさっきから田沢の喋り方おかしくない?
なんか昔の格式高い家の息子みたい。
「な、なあ……さっきから何の話をしてんだ?この本の作者は逢留蘇途人って人なんじゃ……」
良太が混乱した顔で聞く。
すると田沢は馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「フン。ペンネームなどいくらでも変えられる」
た、確かに……
よく考えてみれば、逢留蘇途人なんて名前、現実離れしてる。
だけど……。
「だからって、何で貴方や景くんが作者候補になるんですか?」
あたしは素朴な疑問を口に出したつもりだったんだけど………な。
なんでそんな侮蔑的な目で見るのよ。
「景くん、と名を呼び、その人となりを知りながら、未だ気づかぬとは……呆れを通り越して感動を覚える」
「は?意味わかんない」
「解らなくてよい。貴様には関係のないことだ」
か……
「関係ないってどーいう意味よ!?」
あたしはカッとなって怒鳴りつけるけど、田沢は無視して景くんに向き直る。
「それで?奴に遭ったのだろう?斎藤弓鶴に」
田沢が紡ぐ名前に、景くんの力無い目が鋭く光る。
