「何か、御用でしょうか」
景くんが警戒した声音で問い掛ける。
すると田沢は、懐から一冊の本を出した。
「ひとつ聞く。この本の作者は景、貴様か?」
見覚えのある表紙。
「『水鏡に映る花』じゃねえか……」
そう。その本は、何を隠そうあたし達演劇部の題材になった『水鏡に映る花』だった。
だけど、これを景くんが書いた……?
ついに田沢は頭がおかしくなったんじゃないだろうか。
そう思いながら景くんを見るけど………。
景くんの顔はいたって真剣だった。
「…いいえ。違います…」
そして田沢をじっと見つめる。
「私は、貴方が書いたものかと思っていました」
……え……?
景くん、何言ってるの?
この小説を田沢が書いたって……。
二人とも、さっきから言ってることがおかしい。
何か言いたくても言うことが見つからず、あたしは黙るしかなかった。
