「――佑、ビンゴ」
拓真が桜の木の下を指差す。
そこにたたずむ景くんは、黙って木を見上げていた。
ジトジトした雨が、その背中を濡らす。
あたしは雨に打たれるのも構わずに、景くんに駆け寄った。
少し遅れて良太と拓真も走ってくる。
あたしは、震える背中にそっと呼びかけた。
「景くん?」
――雨のせいで判りづらかったけど、振り向いた鳶色の目は確かに少し赤く、濡れていた。
「…こんなとこいたら、風邪引いちゃうよ?」
景くんは何も言わない。
仕方なしに景くんの腕を引っ張り屋根の下に入る。
抵抗も何もせず、ただされるがままの景くんは、今にも倒れてしまいそうだった。
「…どう?少し落ち着いた?」
「はい…すみません…」
景くんはうなだれて呟いた。
あたし達は西棟に来ていた。
ここは一般教室があり、皆が部活動や委員会に行っている今の時間帯はとっても静か。
一年生の教室の前を通ったとき、景くんを見てざわついていたけど……。
やっぱり景くんは有名人みたい。
