雨は全てを濡らす。

桜の木も、学校舎も、アスファルトの道路も。

空を裂く鳶の翼さえも…




窓の外を見ると、雨が地面を打っていた。

「ジメジメしてんな…」
良太がボソッと呟く。

拓真もぐったりしていた。

…何で梅雨って、こんなにジメジメするんだろ…

景くんは、さっきからずっとあたしの髪をいじっている。

「景く~ん…まだ?」

「す、すみません」

あたしの髪は、丁寧に梳かれてまとめあげられていた。



キャストが決まった。

景姫役はマナ先輩。

青年役は捜し中。役名は役者の名前をそのまま使うらしい。

大妖怪の息子で、景姫に結婚を迫る君仁(きみひと)役は誠二先輩。

景姫を襲い、また一方的な愛を押し付ける錫斗(すずと)役が拓真。

青年の親友であり景姫との逃亡を助ける妖怪、サンの役を良太。

青年の許婚で、青年を溺愛している娘、お勢(おせい)役が美香先輩。

あたしは、サンの妹で同じく妖怪のリン役。


あとはエキストラで何とかする。

うちの部は部長に認められない限り入れないので、人数が極端に少ない。

だから、衣装も少なくてすむんだけど…