「……帰ろうぜ、佑」

後ろから良太がひそひそと囁いてきた。

「う、うん………」

あたし達はなるべく音を起てないように後ずさり、そっとその場を後にした。




「…なんだったんだろうね、さっきの」

どうにも考えがまとまらなくて、あたしはぼそっと呟く。

二人を見ると、どちらも首を横に振っていた。

「…まあ、気にしない方がいいんじゃない?」

拓真のいつにもまして冷静な言葉に、あたしは迷いながらも頷く。

「そうだね…」

これは、誠二先輩の事だから、あたし達が首を突っ込んじゃいけない話なんだ。




そのあとは事柄に触れることなく、あたし達は帰路についた。




…『僕じゃ代わりは出来ない』。

なんでも完璧な誠二先輩が出来ないことって、なんなんだろう……