「君の瞳を見たときに、分かったんだ」

誠二先輩は、景くんの平らな胸に手を置いた。

「君には、心に決めた男(ひと)がいる。だから、他のどんな男が笑いかけても、強い感情や思いを抱かない」

そして手を移動させ、景くんの頬をそっと包んだ。

「違うかい?」

景くんは、キュッと拳を握る。次の瞬間―…とっても、悲しそうな顔をした。

誠二先輩が、さっと手を離して体を起こす。

「…なにか、あるみたいだね…」

景くんは、何も言わなかった。誠二先輩は、震える肩に手を置く。

「今は、何も聞かないから。話せるようになったら、話して?」

その優しい言葉に、景くんはそっと頷いた。

「…はい」