「ご苦労様でした」

そして、後ろの私をひょいと見てにぱっと笑う。

「そろそろ彼女に教えてあげたら?」

………何の話?

すると、覆面に黒装束(今気がついた)の男がこちらを振り向いた。

―――瞳の色に、私は凍る。


明かりを受けて輝く、夜色の瞳―――

彼はそっと覆面を外した。

「――景」

口に、いつもの不適な笑みを浮かべて。




「…弓鶴様…」




幻、だろうか。

誰よりも傍に居たい人。


目の前が霞む。

「――ったく、一月ぶりだってのに、泣きっ面見せてんじゃねえよ」


呆れたような声も、私の涙を拭ってくれる指も。

今、私の目の前にある。


「ふ…うっ…だって…」

凛が、そっと私の肩に手を置いた。

「……よかったですね、姫様」

「はい……!」