「――弓鶴、様」

「上出来だ」

褒めてもらうと自然と笑いが零れた。










「……ねえ、暁野君」

「……なんだ」

「あの二人、恋仲にしか見えないんだけど。弓鶴君、あんなガキっぽかったっけ?」

「……気のせいではないか」

「いやいやいや、現実逃避しないでよ。…でも」

「でも…なんだ?」

「弓鶴君が十八の頃、まだ彼も同心だった時に一回当時の与力が僕らを吉原(花街)に連れていってくれたことあったでしょ。…ほら、元々酒を呑むっていうよりそーいうことする場所だし、弓鶴君ああいう顔立ちだから、さ」

「……あの時の斎藤さんは気の毒だった」

「…朝、隣の部屋から出てきた第一声が『もう女は懲り懲りだ』だったもんね。文字通り"精も根も尽き果てた"って感じで」
「……和陽(かずはる)」

「あのね、僕が言いたいのは、あんなに女の子が苦手だった弓鶴君が、彼女の手を握ってるのが奇跡に近いってこと」


「…一体あの子は、どうやって弓鶴君の心に居場所を創ったんだろうね…?」