前を歩いている里佳、いっち、かけチャンの3人の。

楽しそうに話をしている声だけが耳を通り抜けていく。





「え…?」





それは突然の出来事すぎた。





落とされた感触が。

黒沢の唇だってことに気付くには。

数秒かかった。





「な、な、な…ッ!?」





“何してくれてんのよ!!”って。

そう言いたいのに言葉にならない。





「ホントは“ご褒美”なんだから花から貰わなきゃ意味ないんだけど」

「はぁッ!?」





そう言って黒沢は。

もう一度同じ感触を落とした。

そして。

意地悪そうに唇の端っこを持ち上げ微笑んだ。





「…“初心者”の花にはハードルが高すぎんだろ?」





思わず手を充ててしまった頬が熱かったのは。

黒沢にバカにされたことが図星だったからか。

初めての感覚におかしくなっているからなのか。

自分のことなのにわからなかった。