「…だからさ。俺は“お疲れさん”の意味も込めてお前のバッグを持ってやってるわけだ」





そう言いながら黒沢は。

左手に持った自分のバッグと私のバッグを。

見せつけるように軽く持ち上げた。





いやいやいやいや。

お言葉を返すようですが、黒沢クン。

いかにも“持ってやってます”みたいな態度をとってますけどね。

アナタさっき。

私とジャンケンして負けてましたよね?

その罰ゲームでバッグ持ち、してるんじゃないんですか?





つい数分前の話なのに。

もう忘れてるなんて。

大丈夫なんだろうか…。





なんて。

軽く心配もしてみたけれど。

黒沢のことだ。

何か裏があるに違いない。





私の中で。

小さく警告音がなった気がした。