「…調子ン乗ってんなっつーの」

「い、いひゃい…」





後退ったはずの黒沢が。

私の両頬を片手で掴んで。

私の顔をグイッと持ち上げる。





形勢逆転。





目が合った黒沢の表情は。

それはもう…。

さっきまでの狼狽えてたモノとはまるで違う。

意地悪な悪魔全開の。

不敵な笑みを口元に浮かべていた。





「…花チャン」

「ひゃい…」





両頬を掴まれてる痛さと。

悪魔の微笑みに捕まった怖さとで。

背中に寒気が走る。





「…お前の“恋愛の初体験”俺が全部貰うから、覚悟しときな」





ニヤリと口角を持ち上げてそう言うと。

黒沢は私の頬から手を離した。





「な、な、なんで初めてだってわかるのよ!!」

「…色気ないから」

「んなッ!?」





わざわざ言わせんなよ、と言いたそうな顔をする黒沢に。

なにも言えなかったのは。

私が本当に“初心者”だったからなのかもしれない…。