「ちょっと!!黒沢っ!!」
「……………………」
「離してってば!!」
「……………………」
「黒沢、聞いてんの!?」
私の肩を抱いて、無言のまま。
黒沢は歩調を緩めずに歩いていく。
背の高さが違ければ足の長さも違うって。
知らないのか、コイツはっ!!
「うわ…っ」
足が芝生にとられて、よろけたとき。
私より2、3歩先で。
黒沢の足が止まった。
「……ハァ…」
よかった…。
やっと止まってくれた…。
黒沢!!お前は暴走列車かっ!!
とりあえず転ばなかった安堵感と。
慣れない早歩きであがりそうになった呼吸を整えようと。
小さく息を吐く。
と、同時に。
黒沢がクルリと振り返った。
「…なんではっきり言わねぇの?」

