落ち着け、落ち着け、私!!
“フゥ”と小さく息を整えると。
少し離れた黒沢を見上げた。
「今?」
「今」
「ここで?」
「そう、ここで」
私の問いに答える黒沢は。
やっぱりわざとらしい笑顔のままだった。
黒沢クン…。
キミは何を考えているのかな?
なんでわざわざこんなとこでやらなきゃならない?
そんな私の考えは顔に出ていたらしく。
黒沢はニヤリと怪しげに口元を緩ませると。
また顔を近づけてきた。
「放っといたら飯食って“ハイ、サヨーナラ”になりそうだからな。
今のうちに拘束してやろうと思って」
拘束って…。
なんか物騒な物言いするね。
しかも黒沢のヤツ。
自分が負けるなんて微塵にも思ってなくない?
「…なんで黒沢が勝つことが前提になってんのよ」
ちょっと膨れっ面になりながら。
黒沢に目をやると。
ヤツはやっぱりわざとらしい笑顔を浮かべて言った。
「俺、負けねぇもん」

