いや、帰りますよ?
言われなくても帰りますけどっ!!
アナタが私の目の前にいるせいで。
周りの視線が痛いんだってば!!
品定めするような視線の中。
場違いのような甘ったるい音が。
私の耳を通った。
「…黒沢ク-ン。話したいコトがあるから、一緒に帰ろ?」
それは。
黒沢の一番近くにいた巻き髪の子。
私の存在なんてまるで無視。
わざとらしいくらいの上目遣いをして。
黒沢の腕に自身の腕を絡ませようとした。
それと同時。
黒沢はその腕をスルリと抜いて。
グイッ。
「…わ…ッ?!」
いきなり黒沢は私の肩を抱き寄せた。
そして。
「俺、彼女いるから」
薄らと眉間にシワを寄せて。
周りにも聞こえるようにそう言った。

