「…映画…?」
黒沢に連れてこられたのは。
学校帰りに里佳と買い物をしたりするショッピングモール。
…の一角にある映画館だった。
「そ。前に予告見て、観てぇなって思っててさ」
チケットは用意してくれてたらしく。
上映時間が近いから、と。
黒沢はそのまま売店に行き、映画定番のポップコーンとドリンクを2つ注文した。
「…ホラーじゃない、よね…?」
「観てのお楽しみってことで」
「えー…」
私の言葉に。
ニヤリ、と意地悪そうに笑う黒沢。
…冗談じゃない。
ミステリーやサスペンスは好きだけど。
ホラーは苦手なんてもんじゃない。
大っっっっっっっっキライなんだから。
あんなの観たら。
夜、お風呂もトイレも行けなくなっちゃう。
背中に走る悪寒を感じながら。
「た…楽しみにしてる…」
黒沢にバレないように顔をひきつらせたのは。
言うまでもない。

