「気をつけてねー」
ニコニコと。
見たこともないような笑顔で見送ってくれるお母さん。
「行ってきます」
「…行ってきます」
外面もよく、爽やかな笑顔を返す黒沢に。
あまりテンションの上がらない私。
だってさ。
黒沢、部屋まで来ちゃったし。
そこから髪を巻くのもなんか気まずいじゃない?
「気合い入ってんな」なんて言われそうだし。
とりあえず、髪は緩く纏め上げるだけにしたけれど。
思うようにいかなくて、スッキリしない。
「…なにブスッたれてんだよ」
「別にぃ」
「なんもないって顔してねぇじゃん」
「なんでもないってば」
黒沢にはわからない。
【可愛く見られたい】っていう女心は。

