Penalty★Game


避けようと思えば避けられたのに。

逃げようと思えば逃げられたのに。

それなのに。

私は動けなかった。





「花…」





耳に唇が触れてしまうんじゃないかって。

それくらい近くで囁かれた甘くて低い黒沢の声。

顔の横についていた腕はそのままに。

空いている方の手は梳くように髪を撫でる。





やっぱりどうかしちゃってる。

黒沢の声が、仕草が。

こんなにも甘く感じるなんて。





まるで黒沢の一挙一動に反応するかのように。

ドキドキがドクンドクンに変わり。

身体中を巡っている血の流れを感じる。





「…ッ…!!」





髪を梳いていた指が首筋を撫でた。





そして。

黒沢は口元を緩ませると。

ククッと小さく笑いを零した。