「…でもさぁ。俺っつー彼氏がいるのに、他の男の想像するとか。ちょっと失礼じゃね?」 いつもより少し低く聞こえる黒沢の声が耳を通る。 …いやいや。 “彼氏”って…アナタ、(仮)ですから(仮)。 わかってます? そう言いたいけど…。 なんか、イヤな予感が…。 背中を走る悪寒にまだ見ぬ恐怖を感じながら。 私は黒沢から顔を逸らした。 そして。 その“イヤな予感”が間違ってはいなかった。 そう感じ、そして逃げ出したくなったのは。 前にも嗅いだことがある。 黒沢の甘い香りが鼻を掠めたときだった。