黒沢との距離が近づけば近づくだけ。
私の心臓は音も動きも増していく。
ドキドキ通り越してバクバクと。
身体中に振動が響く。
もー、カンベンして…。
心臓…壊れそう…。
落ち着きたいのに。
近づいてくる顔がそれを許してくれない。
それどころか。
“ニヤリ”と唇の端っこを持ち上げると。
私が考えもしてなかったことを言葉にした。
「勝負しようぜ」
「はひ?」
「花が勝ったらこれ以上聞かない。でも俺が勝ったら…」
え…あ、ちょッ…なにッ?!
今、なんて言った?!
黒沢の言葉は。
語尾が小さくて聞き取れなかった。
でも。
私にとって決してプラスになるもんじゃないってことだけはわかった。
「ひょっ…くろははッ?!」
「黙れって」
いやいやいやいやッ!!
これが黙っていられるかっての!!
いつもならジャンケンしてからペナルティー決めるけど。
この状況で後から決めるのは危険以外のなんでもない。
「くろはは!!」
「いくぜ?さーいしょーはグー…」
不気味な笑みを浮かべた黒沢は。
私の話なんか全く聞いてはくれなかった。

