桜、月夜、愛おもい。




「はい。はい。えぇ、とりあえずは。はい、よろしくお願いします」


下に降りると、お母さんが電話をしていた。

私を見つけると、おいでおいでと手招きする。


「何?」


お母さんは「咲菜ちゃんにかわりますね」と言って、咲菜に受話器を差し出した。


咲菜はそれを受け取る。



「はい」

「あっ!咲菜!?大丈夫?奈津ちゃんは?」

「お母さん?」


電話の相手は、咲菜のお母さんの千佳さんだった。



「台風が意外にひどくて、心配で電話したの。大丈夫?」

「うん。全然平気。お母さんこそ気をつけてよ?――」


私はそこまで聞いてその場を離れて、お母さんのそばに行く。


お母さんは、ソファーに座ってコーヒーを飲んでいた。