「もういいの。このまま会わなければ、忘れちゃうよ。きっと」
精一杯微笑って言う。
強がり。
分かってても、こうするしかできない私は、どうしようもなく弱い。
たとえその先に光があると言われても、私は胸の痛みがひろがることを恐れて何も出来ない。
本当に、弱くて臆病な人間だ。
「…本当に…?」
咲菜が不意に呟いた。
その真っ直ぐとした声に、私は顔を上げた。
そこには、今まで見たこともないくらい、真剣な瞳をした咲菜がいた。
「奈津が強がり言ってるのは分かってる。でも、どうして今言ってるのか分からない」
少し刺々しい声は、咲菜が怒っていることを表していた。
咲菜は更に続ける。
「会えないわけじゃないのに、どうして会いに行かないの?そんなに、『凛桜くんが好きだ』って言ってるくせに、どうして‘忘れちゃう’なんて言うの?」


