しばらく沈黙が続いて、私は口を開いた。 「信じられないかもしれないけど…」 出てきた声は、とても小さくて、少し掠れていた。 それでも咲菜はちゃんと聞き取ってくれたみたいで、「うん」と相槌をうった。 「すごく驚くと思うけど…」 咲菜はまた、「うん」と頷く。 私は微笑んだ。 「私ね?恋しちゃったの。あたたかい桜の精に」 どんよりとした雲が、窓から見える空いっぱいに広がっていた。