桜、月夜、愛おもい。




着いたのは、桜の木。

凛桜の桜。


何でかは分からない。

足が勝手に動いてた。


ここだと思った。



上を見ると、枝の上で立つ明菜さんがいた。



「っ…明菜さん!」


私は桜の木に駆け寄った。



明菜さんは落ちたら確実に死ぬ高さにいる。


足でも滑らせたら―――!!!



「明菜さん!下りてきて!」


私は必死に叫んだ。

明菜さんは私を見ると微笑んだ。



そして言った。







『 ゴ メ ン ネ

ア イ シ テ ル 』







声は聞こえなかったけど、確かにそう言った。



その姿が、記憶の中の、実母と重なった。



「……お母さん…?」



明菜さんは枝から飛び降りた。


身体が、落ちていく。



「明菜さん!!!」



地面に吸い寄せられるように。


明菜さんは落ちて行く。



――もう―



「凛桜ーーーーーっ!!!!!」





力の限り、叫んだ。