桜、月夜、愛おもい。



玄関にあの人はいなかった。

一瞬ホッとしたけど、靴はあるから家の中にいるのは間違ない。

音を立てないように、ドアをゆっくり閉めた。


外と隔離されて、リビングのテレビの音がすごく大きく聞こえた。



靴を脱いで、静かに階段を上る。


自分の部屋に入って鍵を閉めてしまえば、私はあの人の牙にかかることはない。

そのまま朝の仕事に出掛ける時間まで待てばいい。