桜、月夜、愛おもい。




家に近付くにつれて、鼓動が早くなる。


冷や汗が出てきた。

足が重い。


玄関の前に立って、息を深く吸い込む。


ガチャ…


ドアを開くと、お酒の匂いが鼻をつく。

下に所々ヘコんだビールの缶が転がっていた。


玄関は零れたビールでグチャグチャで、脱ぎ散らかされている靴がグッショリと濡れている。



(…今日は荒れてるな)



あの人がいたらすぐ逃げられるように、身体のほとんどを外に出して、私は恐る恐る家の中を覗き見た。