桜、月夜、愛おもい。



出てきた言葉に、心臓が短く大きな音を立てる。

過ぎる一つの考え。


でも、私は頭を振り、すぐにそれを消した。


美樹ちゃんは凛桜が見えている。確実に。
さっきだって話をしていた。

もしそうなら、それは有り得ないことだ。


彼女がそう言う力を―――


「お姉ちゃん!早く行こうよ」


突然頭の中に割り込んできた声に、私の思考は止まる。

ハッとして顔を前に向ければ、いつもの無邪気な笑顔で、美樹ちゃんが駆け寄って来る。

さっき見た表情が幻だったかと思えるほど、幼い笑顔。


「あ、うん。そうだね」


その笑顔に少し戸惑う。

途切れながらも返事をして、伸ばされた小さな手を握った。


そのまま、目の前に立つ凛桜を見る。