玄関の鍵を閉めて、何故か門の前で野良猫に話しかけている美樹ちゃんに歩み寄る。
猫はやる気のなさそうな目で、にこにこと話しかけてくる少女を見つめていた。
「でねっ、彼女のランちゃんがとっても可愛いの!クロスケもやるよねー。あ、今クロスケって言ったの秘密だよ?怒るから」
「…ナー」
美樹ちゃんが人差し指を立てて言うと、猫はまったくやる気が無いというように鳴いた。
「…猫に言葉が分かるの?」
服が地面に付かないように気をつけて、美樹ちゃんの隣りにしゃがみ込む。
猫を見つめたままそう尋ねれば、「うんっ!分かるよ」と元気な返事が返ってきた。


