桜、月夜、愛おもい。




「戸締まりはちゃんとしてね。車に気をつけて。手は離しちゃダメよ」

「もう!分かってるって!早く行きなよ」


靴を履きながら早口で喋るお母さんに、私はピシャリと言う。

今は九時半。
早く行かないと、本当にやばい時刻だ。



「じゃあ、行ってきます!」


叫ぶように言って、お母さんは外に駆け出た。

玄関の扉が、バタンと大きな音を立てて閉まった。



「………もっと丁寧に閉めてよ…」


眉をしかめながら呟いて、私はリビングに戻った。