桜、月夜、愛おもい。



そこまで考えて、私は思考を止めた。


否、正確言うと、響いたノックの音に止められた。


「何?ってか誰?」


私はドアの向こうに向かって言った。

いたのは咲菜だった。



「奈津、私どこで寝るの?」


ドアを開けて顔を覗かせ言う。

機嫌がとてもいいらしく、口元に微かな笑みが浮かんでいた。



「下に布団敷いてたでしょ。あそこで」


私は質問の答えを返し、ベッドから降りて、クローゼットの中を見回し、ワンピースやパンツを代わる代わる手に取り明日の服を選び始めた。



「分かった、ありがと」


咲菜はそう言うと、ドアをパタンと閉めた。

少しして、思い出したように「おやすみ」が聞こえてきたけど、面倒だったから無視した。