桜、月夜、愛おもい。



次の瞬間、私は美樹ちゃんに思いっきり抱き付かれた。


これは世間一般でいうハグだが、私これで軽い腹痛を催す。

彼女の小さな頭が、ちょうどいい高さで私のみぞおちに当たるからだ。



「お姉ちゃんっ。美樹と一緒に遊ぼー?」


美樹ちゃんは、キラキラと輝く笑顔でそう言った。

私は引きつった笑顔で答える。


「あの…私ちょっと用事があるの。だから…ごめんね?」


そう言った後で、彼女の顔を見てハッとする。


今にも零れ落ちそうなくらい、涙の溜まった瞳。

八の字になった眉。

ギュッと噛み締められた唇。

上気して赤くなった頬。


推定で爆発五秒前。



ヤバい!


そう思った時――



「美樹っ!おいで」



先輩が美樹ちゃんを呼んだ。