桜、月夜、愛おもい。



下の階が騒がしくなったから、静谷先輩が来たんだろう。

私はゆっくりと階段を降りた。



「だから、美樹は甘党なんだって」

「糖尿病になるわ。ダメ。絶対ダメよ」

「砂糖を少なくとも三杯は入れないと飲めないんだよ」

「三杯とか言いつつ十杯近く入れるじゃない」

「それは味を調整する上で仕方のないことで…」


リビングでは、先輩と咲菜がテーブルを挟んで真面目に議論(っぽいこと)をしていた。

テーブルの上には、湯気を立ち上ぼらせたカップが一つ置いてある。


ソファーに目をやると、お母さんと小さな女の子が楽しそうにお喋りしていた。

静谷先輩の妹、静谷美樹ちゃん。

誰もが認めるであろう美少女だ。



「あっ、お姉ちゃん!」


私に気づくと、美樹ちゃんは整った顔をほころばせて駆け寄って来る。


その様子は本当に愛らしくて、一瞬忘れてしまった。



彼女が、静谷先輩の妹だと言うことを。