桜、月夜、愛おもい。



私は急いで服を着た。



ふと見た窓の外は真っ暗で、月があることを忘れてしまいそうになる。

それでも、視線を少し上げればちゃんとそこにあって。真っ黒な中にしっかりと、淡い黄色で自分を主張していた。


その光景はとても幻想的で。

そしてやっぱり、思い出すのは彼のこと。



「…凛桜…」


抱き合ったことも
想いが通じ合えたことも
凛桜に抱き締められたことも


すべてが夢みたいで仕方ない。



でも、

耳に残る囁かれた時の声とか
細いくせに力強い腕とか
花の香りがする腕の中とか


そのすべてが、私の胸に柔らかな痛みを生んで、教えてくれる。

嘘じゃないよ。夢じゃないよ。って。


あなたが愛しいんだってことを。
一生懸命教えてくれる。