咲菜が、後ろから黙ってついて来る。
私は振り返った。
「どうしたの?」
そう聞けば、咲菜は言いにくそうに唇を震わせる。
でもどこか嬉しそうで楽しそうで、その瞳には煌めく光があった。
「実は………………………先輩が来るの!」
「………は?」
輝く瞳で言い放たれた言葉に、私はそれしか返せなかった。
衝撃が強すぎて。
「…先輩って、静谷先輩?」
「それ以外に誰がいるのよ。奈津に頼みたいことあるんだって」
そう言って微笑む咲菜は、どこからどう見ても“恋する乙女”だ。
いつものクールビューティーはどこへやら。今は後ろに、美しく咲き誇る花々を持っている。
その姿は、やっぱりどんな時の咲菜よりも可愛かった。


