少し困ったような笑顔を作り、彼女を見る。


「ごめんねっ。早くビラ配り終えたくて。就活どうしよう。」


 当たり障りがなく、かつ彼女が納得しそうな言い訳をスラスラ述べた。


「もう!それでどういう業界行こうと思ってるの?」

 不満そうな顔はそのままだが、彼女は話を進めようとした。大学入学時、話を聞いていなかっただけで1日口を聞かなくなるような彼女だ。それ程機嫌を損ねていない事が分かって安心した。


「まだ決めてないよ。」


「でも−」


 何かを言おうとした彼女を遮り、


「アタシ、ビラ配り終えちゃったしちょっとトイレ行くね。」


 顔の前で手を合わせ、申し訳ないという表情を浮かべた後、彼女に背を向けた。