「企業は知名度だけではない。中小企業にも優良企業はある。」教授はそう言う。


　「お前は大手の一般職で充分だ、どうせ結婚するのだから。」父親もまたそう言う。


　“いい企業”の定義なんて誰にも分からない。つまり、自分自身で見極めなければならない。



「ねえ聞いてる？さっきから手動かしてばっかりで私の話を聞いてないじゃない。」


　考える事に没頭しながら、ビラを配っているとトモダチが話し掛けてきた。顔を彼女の方に向けると、不満そうな顔でこちらを見ている。彼女は少し我が儘な性格で、機嫌を損ねると面倒なことになる。