舞に薬を塗り終わり、先生のところに薬を返しに行く。
「…薬、塗り終わった。」
「あらどうも。…高谷君って、あの子のこと大好きなのね。」
先生がフフッと笑いながら言う。
「…。好きじゃない。」
「あら。ウソはダメよ。」
「…。」
この先生にはなぜウソが通用しないんだ…。
少し考えだしたオレを見て先生はオレの行動がおもしろいのか、今度はクスクス笑い出す。
「大丈夫よ。きっとあの子にはバレてないわ。」
「…ほんとに?」
オレは疑いの目を向ける。
「だってあの子、鈍感そうだもの。」
「…確かに。」
「まぁ、私にはバレたけどね。勘がいい子はわかるわね。」
「…。」
少し安堵したオレに、先生は釘を刺した。
はぁ…。
舞の妹にはバレてんのか…??
アイツは勘がいい。
…たぶん。
舞の妹にバレてるとしたら、千里にも伝わってるだろうな。
…勘弁してくれ。
そこまで考えたオレは、考えるのが嫌になってさっさと舞のベッドまで戻った。
後ろからは、まだクスクス笑っている声が聞こえた。
そういえば…今、保健室には誰もいないといいが…
この会話を聞かれているとまじやばい…。
この噂が広まって舞の耳にでも入ったとしたら…
オレは一生舞に近づけない。
なにせオレは…
舞を傷つけて記憶を失くした張本人なのだから。
舞をフッたくせに今更舞のことが好きだなんて言えるわけがない。
はぁ…オレ、バレバレだったのか。
先生に言われるまで気付かなかった…。
