「お前のせいで俺が役に立たねぇとか言われるし。」

そんなの知らない。

そっちが勝手にやったことなのに。

「つーか時間の無駄だった。」

不適に笑う健ちゃんに、昔の面影はなかった。…そっか。そもそも、昔の健ちゃんが偽りだったんだもんね。


「お前が神岡と付き合いだしたって聞いてチャンスだと思った。」

「最低…」

「あぁ、知ってる。けどお前も結構ウザいぜ?」

「そんなのっ…あたしが嫌われる理由になってないよ…」

「なってるっつーの。単に俺がお前みたいなタイプのやつが嫌いだってことだろ。」

「あたしもあんたみたいなやつが1番嫌い!こんな卑怯な手使ってないで堂々と勝負すればいいじゃん!」

あたしが大ちゃんと付き合い始めたせいで、健ちゃんのターゲットがまた、龍泉に………


「今時そんなの龍泉ぐらいだろ。」

「そうかもね、あんたとは全然ちがう…!」

あたしがそう言うと、健ちゃんの顔が不機嫌になった。

「ほら、そういうとこ。ムカつくんだって。つーかお前は絶対に幸せになんかしてやんねぇよ。」


―コツン…

静かな病室に、健ちゃんの足音が響く。


「来ないでよ!」

「威勢がいいのも今のうちだけだろ。手震えてるぜ?」

言われて気付いた。

手が小刻みに震えている。

震えている手をギュッと握り締めて、健ちゃんを睨む。

「あー怖い怖い。」