「幸せだよ、大好きな人と一緒になれるんだもん。」

小さな声でそう言うと、お父さんは微笑んだ。


―ギィィィ……

大きな扉が開いた。

結婚式特有の音楽が聞こえる中、お父さんとゆっくり歩く。

少し先の方に優しく微笑んだ大ちゃんがいる。

小さな段差の前まで来ると、お父さんの手が離れた。

大ちゃんと向かい合って立つ。


「健やかなるときも、病めるときも―――………」

牧師さんが言う言葉を一つ一つきちんと聞く。



「共に生きることを誓いますか?」

「誓います。」

「それでは指輪の交換を。」


あたしは大ちゃんに、大ちゃんはあたしに、指輪をつけた。お互いの左手の薬指に、キラリと光る結婚指輪。


牧師さんが再び、口を開く。

「誓いのキスを…」

あぁ、ついに来た。

これが1番緊張してたんだけどなー……


あたしの顔の前にあった布が捲られる。

キスをする直前に、耳元に口を近付けて、ボソッと何かを言った。


―チュッ…

言い終わった後、大ちゃんは優しくあたしにキスをした。

唇を離したあたしの顔は、真っ赤になっている。

キスで緊張したから、というわけではない。

大ちゃんが耳元で言った言葉に、心臓が跳ね上がった。


『愛してる』


「好き」と言う言葉は何度か聞いたが、「愛してる」と言われたのは初めてだった。

あの部屋を出る前に言いかけてたのは、これだったのかもしれない。