愛詩-アイウタ-

「すいませんっ」


 出口が遠いのはつらい。



 光璃は人混みの中をかきわけた。



 いつもと違うバス賃。確かめるため表示板を見る。


 中学生までは子供料金で行けたんだけどなぁ。彼氏と降りる時は本当にはらはらしたのだ。


 まぁ、バレたことなんて今までにないけど。


 それもそれで小学生として通ったということだと思うと少しさみしい。


「230円かぁ…」


 [50円の得っ!]と思った自分に[主婦かよ!]と突っ込む。…虚しい。


 小銭を探ってじゃらじゃらしていると、背後から声がした。



「遅いんだけど。」


 あわてて振り返る。


「ピッ」


…アス男。というのを呑み込んで、なんとか平常心を保つ。


 どうやら、降りるのは光璃とピアス男だけのようだ。


 ピアス男はしっかりバス賃を持っている。多分200円以下。


 光璃はシカトして、そのまま230円を探る。


 200円なら見付かったのに!!あと30円。


 財布をがばっと開き、見る。


 ちょうど車のライトがあたりよく見えた。10円玉が2枚しかない!


 どうしよう。300円出そうかな。