愛詩-アイウタ-

「もぅやだぁ~」


 バスの中。座れるかと期待したが、期待した分損だった。


 立つのも大変で、少し揺れると誰かにあたる。


 カーブがある度隣の男性に謝らなければならない。面倒極まりない。


 今日いつもより混んでる…。


 嫌だなぁと思いつつ、携帯を眺める。あと少し…。


「わゎっ」

 いきなりバスが止まる。バスが前からつんのめるような感覚。…もつかの間、また隣にあたった。

「すいません」


「…」


 シカトかよっ!!


 感じ悪~…

 隣にいる人は年は同じくらいで、髪は金に近い茶色。耳と唇にピアスがある。背中にはギターかラケットみたいなものをしょっている。


 かっこいい、けど…。


 ピアス痛いっ。

 どうしてもピアスを開けている人を見ると耳が痛くなる。この人は唇まで開けているから唇も痛くなってくる。


 性格悪いし。ピアスだし。


 最悪…。



 ピンポーン


 停車ボタンが鳴った。

 止まるバス停名と自分の降りるバス停名を比べて考える。


 歩いても帰れる距離。隣の人も嫌だし、満員で座れないのはきつい。光璃は降りることに決めた。


「次は~御浜小学校前~」


 車掌の漫才のような声がしたところでバスは止まる。