―ラブホ街ですれ違った恋人達は、手を繋いで幸せそうに通りすぎていった。
俺は莉紗さんの手が、手錠みたいに重く感じてならない。
莉紗さんのは慣れた感じでホテルの中へ入っていく。
こういうところへ、来る男が何人もほんとはいるのかもしれない。
ここへ来て、することなんか限られてる。
ひとつしかない。
俺は自分が自分でいるのがたまらなく嫌になった。
何もかも投げ出したい…
あの日のように、俺はサワー・カクテル・ビールを一気に飲み干す。
自分の心を押し殺すしかない。
心が空っぽになった体なら、どうなったっていい。
そんなに上手くはいかないんだろうけど。
正気でなんかいられない。
酔ってフラフラになって、体中にアルコールが回ってくると体もだるくなって、もうどうでも良くなってくる。
体の芯がぶれてきた。
可奈さんには恩がある…だからこれで何とかなるなら…
遥以外のエッチなんか意味ないんだ。



